
こんにちは。
猛暑の夏、流石に食欲も無くなって来てしまいますね。
食べ物が腐りやすい季節に合わせ、前回は「発酵と腐敗」について書かせていただきましたが、今回はその続きになります。
少しおさらいをすると、前回、発酵も腐敗も同じ現象で、私たちが食べられれば発酵ですし、食べられなければ腐敗とお伝えしました。
さて、日本で一番くさい食べ物と言えば、「くさや」を思い浮かべる方は多いかもしれません。伊豆諸島の名産品としても知られる魚の干物ですね。一般的に、干物を作るとき、魚を塩水に浸け込んでから干します。しかし、昔、伊豆諸島では塩は貴重品だったので、やむを得ず塩水を交換せずに、繰り返し使い続けた結果、くさや汁が生まれたそうです。
そして、世界で一番くさい食べ物と言えば、スウェーデンの「シュールストレミング」を思い浮かべる方が多いかもしれません。ニシンを塩水に漬け込みますが、ここでも昔は塩が貴重品だったそうで、塩を節約するために、やむを得ず薄い塩水に漬けた結果、シュールストレミングが生まれたそうです。
筆者はどちらも食べたことがありますが、どちらもニオイがキツいので、たまたま周囲に居合わせた人には迷惑をかけたようです(笑)。私にとっては「発酵」でしたが、周囲にとっては「腐敗」だったのかもしれません。
日本にも、世界にも、さまざまな発酵食品(腐敗食品?)があります。おそらく、その多くは「おいしいものを作ろう」と思って開発されたのではなく、「やむを得ない事情」で作ったものが、イロイロな偶然が重なって今日まで生き残ったのだと思います。
私たちのご先祖たちが「地元の資源をフル活用して、何とか食事を確保しよう」「できれば長く保管できるようにしよう、保存性を高めよう」と工夫しまくった結果、イロイロな発酵食品、伝統食品が生まれたのだと思います。そして偶然にも「タベモトで食べたけど、美味しかった」「なぜか栄養価が上がった」「何か健康への機能性がありそう」といった副次的効果が見つかったものが、今日まで生き残ったのではないでしょうか?
そう考えると、発酵食品、伝統食品は、ズバリ「SDGsそのもの」だと思いませんか? 地元の資源をフル活用して食品として生かすことは、貧困や飢えをなくすことにつながります。保存性を高められたら、食品ロスは減ります。
実はSDGsの考え方は、大昔からあったのかもしれませんね。
ちなみにシュールストレミングすら体験した著者が、今までで一番くさいと思った食品は都内某所の豚骨ラーメン屋です(←美味しいし、今でも時々行きますよ)。
それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ATP・迅速検査研究会 理事
(元月刊HACCP副編集長・元月刊フードケミカル副編集長)
立石 亘
Comments