こんにちは。今回は旬の食材についてのお話をさせていただきます。
初ガツオの美味しい時期になりました。刺身、タタキ、ワラ焼き……美味しいですよねぇ。
スーパーのお刺身コーナーを覗いても楽しくなりますし、旬な魚介類を食べていると、日本人に生まれて良かったなぁ、なんて思います。
でもこの時期は、「アニサキスの食中毒が増えている」という報道を見かけたり、聞いたりもします。
あまり知られていませんが、アニサキスは、いま日本で一番たくさん起きている食中毒です。去年、日本では約700件の食中毒が起きていたのですが、
その半分はアニサキス食中毒です。そして、その多くは飲食店や家庭で起きています。では家庭や飲食店では、どのようなことに注意すればよいのでしょう?
アニサキス・・・スーパーで買ったお刺身のトレーなどで、実際にウネウネ動いているのを見たことがある人もいるのではないでしょうか?
白色の少し太めの糸みたいな、2~3cmほどの寄生虫です。生きたアニサキスを食べてしまうと、おなかが急激に痛くなったり、吐き気に襲われたりします。
こうなると病院で胃カメラ検査を受けて、アニサキスを取り除いてもらうことになってしまいます。
アニサキス食中毒が起こる食品は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどイロイロです。
元々はこれらの魚介類の内臓の中にいて、宿主の魚介類が死ぬと内臓から筋肉に移動するそうです。
イロイロな魚に寄生していて、食中毒もたくさん発生している――何とも恐ろしい気がしてきませんか?
とはいえ、過剰に怖がる必要はありません。中国の兵法書「孫子」には「彼(敵の意味)を知り、己を知れば、百戦してあやうからず」とあります。
日本の物理学者・寺田寅彦は「怖がらなさ過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなか難しい」と言いました。
敵の生態を正しく知ることで、自ずと正しい対策が見出せるということなのでしょう。
そして、アニサキス対策はとてもシンプルです。手っ取り早いのは、焼くか凍らせればよいのです。冷凍か加熱でアニサキスは死にます。
生で食べるのであれば、薄めにスライスすれば、切断できるかもしれません。アニサキスは物理的に破壊すれば死にます。
「なめろう」という魚を細かくたたく料理がありますが、これはアニサキス対策も兼ねているのかもしれませんね。あとは調理の時によく見て、見つけたら除去すればよいのです。
見つけたら倒せ、見敵必殺、サーチ&デストロイです。
内臓を取り除いたり、内臓の生食を避けることも有効です。食品は「新鮮だから安全」と思い込んでしまいがちですが、
アニサキスのような場合もあることを知っておいて下さいね。
よく「酢でしめたり、塩や醤油につける、わさびを付ければ死ぬのでは?」というお話もありますが、彼らはそれくらいでは死にません。
しめサバでアニサキスにあたった、という事例は実は多いです。
ちなみに、ウイスキーなどの度数の高いお酒の中でも彼らは簡単には死にません。
居酒屋で「アニサキス?そんなのアルコール消毒だ!」とビールをあおる人がいたら……まあジョークだと祈りたいですね(笑)
今年、福島県いわき市ではアニサキス食中毒が多発していることを受けて、
飲食店にアニサキス対策としてチェックリストを掲示する「アニサキス食中毒予防対策実施宣言」という取り組みを始めました。
そのチェック項目は「新鮮な魚を選び、速やかに内臓処理を行った」「目視確認を徹底している」などです。
調理の基本とも言えますね。何事も基本が大切だと改めて感じてしまいました。
※厚生労働省パンフレット「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
※福島県いわき市「アニサキス食中毒予防対策実施宣言」
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
ATP・迅速検査研究会 理事
(元月刊HACCP副編集長・元月刊フードケミカル副編集長)
立石 亘
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